バイオプラスチックの2つの分類軸
バイオプラスチックは「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」の総称です。この2つは独立した概念で、バイオマス由来でも生分解性がないもの(バイオPE等)や、石油由来でも生分解性があるもの(PBAT等)が存在します。本記事では、特に企業の調達・製品開発で選定候補になりやすい4種——PLA・PHA・PBS・PBATを比較します。
4種の一覧比較
【PLA(ポリ乳酸)】原料: トウモロコシ・サトウキビ / バイオマス由来: ○ / 生分解性: 工業堆肥化のみ(58℃以上) / 土壌分解: △(遅い) / 海洋分解: × / 耐熱温度: 55〜60℃(高耐熱グレードで110℃) / 特徴: 透明性が高い / コスト: 汎用プラの約2〜3倍
【PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)】原料: 糖・脂肪酸の微生物発酵 / バイオマス由来: ○ / 生分解性: 優れている / 土壌分解: ○ / 海洋分解: ○(TÜV Austria「OK Biodegradable MARINE」認証取得品あり) / 耐熱温度: グレードにより異なる / 特徴: 海洋生分解性を持つ唯一の汎用バイオプラ / コスト: パイロットスケールでkg単価2USD以下の事例もあるが、製品グレードでは汎用プラの数倍以上
【PBS(ポリブチレンサクシネート)】原料: コハク酸+ブタンジオール / バイオマス由来: △(バイオ由来原料比率による) / 生分解性: 土壌中で分解 / 土壌分解: ○ / 海洋分解: △ / 耐熱温度: 約115℃ / 特徴: PEに近い物性、農業用フィルムに強い / コスト: 汎用プラの約2〜3倍 [要確認: PBSの最新市場価格]
【PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)】原料: ブタンジオール+アジピン酸+テレフタル酸 / バイオマス由来: ×(石油由来。バイオマス由来品も開発中) / 生分解性: 工業堆肥化・土壌で分解 / 土壌分解: ○ / 海洋分解: △ / 耐熱温度: 約110〜120℃ / 特徴: 柔軟性・伸長性に優れる / コスト: 石油由来で約2〜2.5倍、バイオマス由来で約4〜5倍
用途別の選定指針
食品容器(カップ・トレー・蓋)
推奨: PLA。透明性が高く、冷蔵食品・冷たい飲料の容器に適しています。ただし耐熱温度が低いため、温かい飲食物には高耐熱グレードの採用が必要です。
包装フィルム・ラップ
推奨: PBAT または PLA+PBATブレンド。PBATは柔軟性と伸長性に優れ、フィルム用途に最適です。PLAとのブレンドにより、コストと堆肥化可能性のバランスが取れます。
農業用マルチフィルム
推奨: PBS。土壌中の微生物で自然分解されるため、使用後の回収が不要です。農業用フィルムとしての実績が最も豊富です。回収コスト削減効果を考慮すると、材料費の増加分は相殺されるケースがあります。
海洋環境に接する製品(漁具・海洋関連包装)
推奨: PHA。海洋生分解性の認証を取得した製品が存在する唯一のバイオプラスチックです。カネカのPHBH(Green Planet)はTÜV Austriaの「OK Biodegradable MARINE」「OK Biodegradable SOIL」「OK Compost HOME」「OK Compost INDUSTRIAL」の4認証を取得しています。コストは高いですが、海洋プラスチック問題への対応として注目されています。
EU向け輸出製品の包装
推奨: PLA(バイオマス由来要件を満たす) + リサイクル可能な設計(モノマテリアル化)。PPWR対応にはバイオマス由来であることに加え、リサイクル可能性が求められるため、PLAのモノマテリアル包装が有力な選択肢です。
コスト比較と導入の現実解
バイオプラスチックのコストは汎用プラスチック(PP・PE)の2〜5倍が一般的です。いきなり全製品を切り替えるのは現実的ではないため、以下の段階的アプローチが推奨されます。
(1) まずEU向け輸出製品やCSRレポート対象製品など、切り替えの必然性が高いものから着手する。
(2) PLAやPBATなど比較的コストが低い素材で実績を作る。
(3) 量産効果が出てきた段階でPHAなど高機能素材に範囲を拡大する。
よくある誤解と注意点
(1)「バイオプラスチック=どこでも分解される」は誤り。PLAは工業堆肥化施設でのみ実用的に分解されます。(2)「バイオマス由来=生分解性あり」は誤り。バイオPE・バイオPETはバイオマス由来ですが生分解性はありません。(3)「生分解性=リサイクル不要」は誤り。PPWRではリサイクル可能性が最優先で、生分解性は特定用途のみ認められています。
(4) PBATは現時点で主に石油由来原料から製造されており、「バイオプラスチック」と名乗っても化石資源依存の面があります。